森の花ごよみ 秋の章 (11月)

藻岩山きのこ観察会
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森の花ごよみ 秋の章 (11月)
2011.11.11
11月に入って足踏みをしていた気温も立冬(8日)を機に平年並みに下がり、峰筋のダケカンバ林が透け、山麓の落葉樹の多くも冬に備えて葉を落とし裸木に姿を変えました。春以来、光合成の役目を担い働き続けてきた葉、葉・・・、一枚一枚は小さいが、その大きな集りは、私たち人間をはじめ、地球上の生き物を養ってくれる掛け替えのない葉っぱたちなのだ!すっかり色の褪めた藻岩の森に向けて、そんな思いを込めて「半年の間本当に御苦労さま」と花ごよみから言葉を送らせてもらいました。
*ミュンヘン大橋より10日撮影 天気;快晴 気温;最高12.0℃ 最低1.4℃ 

ミズナラの名残り葉 *落葉期 11月下旬
ブナ科の落葉高木
 まわりの木々の葉が散りだす頃、ミズナラが粗い鋸歯のある葉をくすんだ黄褐色に染めます。その後、秋風を受けて順次に落葉しますが、遅くまで枝に残っている葉(名残り葉)が見られます。
 この時期、ミズナラの実のドングリ(堅果)が地面に愛嬌ある姿で転がっているのですが、今年は全く見当たりません。ナラの類は2,3年おきに豊凶年が繰り返えすと言われ、今年はどうやら凶作年らしく、この秋の頻繁なヒグマの人里への出没の一因ではとも言われています。野生樹の豊凶の原因には、気象条件、樹木の本性など諸説がありますが、まだ研究の途上のようです。
*14日撮影 天気;曇り 気温;最高15.3℃ 最低7.0℃ 
カラマツ(唐松)*落葉期11月下旬
 
マツ科の落葉高木
落葉が進んだ晩秋の藻岩山のところどころに、黄褐色に色づ いたカラマツの群れが際立っています。馬の背の上手の登山道の脇にもそのスマートな姿を見せています。針葉樹でありながら冬には葉を落とすので、落葉とも呼ばれて親しまれていますが、もとを正せば、気候の似ている本州中部山地から連れて来られた他所者です。そんな逆境に耐えて逞しく根を張っているカラマツが、越年のために間もなく文字通りの落葉期を迎えようとしてます。
*13日撮影 天気;曇り 気温;最高15.3℃ 最低7.0℃ 

落ち葉 *落葉期 11月中旬〜下旬
落葉広葉樹林
11月の末、森の地面が茶褐色の枯れ葉で埋め尽くされる。
虫にかじられたもの、傷ついたもの、緑に輝いていた面影が失せ、痛々しい姿を横たえています。秋の終わりに決まって巡りくるつかの間です。だが、こうした林床の枯れ葉は決して厚く積もることなく、土壌中に住む小動物やきのこなどの細菌によって分解され、水に溶けて根から吸収されて親木を育む力となるのです。カサカサと鳴る落ち葉の踏み音に、そんな森の営みに思いを馳せたゆく秋の一日でした。
*13日撮影 天気;曇り 気温;最高15.3℃ 最低7.0℃
ハルニレ(春楡)の名残り葉 *落葉期11月
ニレ科の落葉高木
15日の朝、昨夜おそく初雪があったと報じられました。初雪の平年日は10月28日で、その遅さは明治9年以来3番目とのこと。街をゆく人々もタウンジャケットの襟を立て足早でした。
 一方、藻岩の森では、すっかり冬姿になり雪を待つばかりです。そんな中に、ハルニレの黄葉がゆく秋に名残りを惜しんで揺れていました。ハルニレは市内の公園樹、街路樹、校庭樹など身近にその力強い姿が見られます。肥沃な土地を好み、豊平川の氾濫原に開けた街の札幌はその条件に合っていたので、「エレムの街」札幌市が誕生したと、辻井博士がその著書(日本の樹木)のなかでが説かれています。
*16日撮影 天気;晴れ 気温;最高6.8℃ 最低0.5℃
森の雪化粧
17日の早朝、藻岩の森にも新雪が見られました。冬に備え葉を落とした木にとって待ちかねていた雪です。動けない森の植物は、その場所の気候条件に合わせて芽吹き、花を咲かせ、落葉しそして休眠と言うライフスタイルを身につけ命を繋いでいるわけです。このところ続いた季節はずれの暖気にはきっと戸迷っていたに違いありません。
 梢の新雪に朝日を受けて輝く森の姿は、北国ならではの美しい風景でした。今冬は、森の生き物が大過なく過ごせる平年並みの降雪量で、しかも穏やかな気候であって欲しいと願って今シーズンの花ごよみを閉じます。
*17日撮影 天気;晴れ 気温;最高3.9℃ 最低-0.2℃


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